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学部案内

学部長挨拶

地域貢献力の基盤としてのコミュニケーションと専門性

 

大学は、 物事をよく知り、その本質や意義を理解すること、つまり「認識」を深める場所です。

 

認識は、3つの要素で捉えることができます。ひとつは、社会生活を送っていく上での共通認識すなわち「常識」であり、社会人が平均的に持つべき知識や意見です。二つ目は、「良識」すなわち社会で一般的に承認されている健全な考え方であり、物事を正しく判断する知恵や理性です。最後は、「見識」すなわち物事をさらに深く見通し、本質をとらえる優れた判断力やある物事に対する確かな考えや意見であり、体系化された情報や科学ということもできます。高校までの学びも同じねらいを持っていますが、知識の獲得に多くの時間が費やされているのが実態と言えます。しかし、優れた考えを社会に再発信するには、常識レベルの知識がベースになっており、知識の獲得を軽んじてならないことは言うまでもありません。また、高い見識は、新しい常識まで発展させてこそ意味があり、さらに、それが人々に対して次なる知恵を生むきっかけとなれば本物でしょう。

 

地域政策学部の目標は、安全・安心で持続可能な地域社会の創造と維持に役立つ力、つまり「地域貢献力」を育成することです。地域貢献力に関する3つの認識(知識・良識・見識)を身に付ける学部です。そのためには、さまざまな人々や組織に触れて、地域貢献力の認識に関する情報を互いが理解し合い、分かち合う力とその発揮が必須となります。コミュニケーション(communication)とかコミュニケーション能力と呼ばれているものです。

 

コミュニケーションのプロセスは、メッセージや情報(インフォメーション・状況に対する知識や適切な判断を生じさせるもの)を記号に変換する「記号化」から出発します。したがって、言語(話す、聞く、書く、読む)と非言語(表情、身振り、態度)の方法やその使い方を理解する必要があります。外国語を学ぶことの重要性もここにあります。次に、「伝達」の段階があるわけですが、問題はチャンネル(伝達経路)と具体的な手段(テレビ、新聞など媒体か直接か)を適切に使うことです。すべてをメールで済ますのがいかに危険なことかを知ってほしいものです。さらに、コミュニケーションの成立には、伝達された記号に関する正確な「解釈」が必要です。そこでは、目の前の記号だけでなく、背景にある考え方やそれを作り上げた送り手の環境までを調査し分析する能力が求められます。しかし、コミュニケーションは、これだけでは完成しません。メッセージや情報の共有すべき意味を両者で確認し一致させるプロセスが必要なのです。「フィードバック」を怠らないということです。

さて、安全・安心で持続可能な地域社会の創造と維持に役立つ力つまり地域貢献力を発揮する場が拡大していることにも注目しなければなりません。現代社会においては、政治家や行政職だけではなく、企業関係者はもちろん農林漁業者、教育者、アルバイター、主婦、NPO職員などすべての市民に、「社会的責任」とともに「社会貢献」が強く求められているのです。同時に、それらを実行するためには、コミュニケーション(能力)の確立が要請されます。コンフリクト(対立や軋轢)がすべて無駄なことではありませんが、コミュニケーションがうまくいかないと、多くの場合は、互いに不快感が深まり、非効率なコミュニケーションが増加します。そして、情報が正しく伝わらず、結果的に意思決定に歪みが出て、いわゆる「回らない組織」を作り、また不快感が蓄積するという悪循環が繰り返されます。そういう事態を起こさないためにも、文化や人種、性別、階層、年代、地位によって異なるコミュニケーションのやり方や感情表現などについて学び続けることが重要です。コンフリクトの性質や要因から目をそむけず、交渉とふれ合いを大切にして、コミュニケーションをコントロールできる能力を追求していかねばならないと思います。

現代社会を見返すと、生活の価値は多様化し、人間行動はグローバル化し、地域社会に起きている問題は多様で複雑なものになっています。そして、問題解決には、多くの専門性が関係し合い、それらの専門性をリンクさせる必要性が強まっていると理解されます。地域政策学部の目標である「地域貢献力を持った人材の育成」とは、俗な言い方をすれば、「潰しが効く人間」をひとりでも多く社会に送り出すことです。そして、何十年、何千年経っても持続可能な地域社会をつくるためには、それらを担う人材が「どんな社会でも生き続ける力」を保持せねばなりません。地域貢献力とは、「どのような専門性にも対応し、時には自分を変質させていく力」と言い換えることもできるでしょう。だからこそ、専門性を学ばねばならないことになります。その観点から、地域政策学部では、教養と基礎学力を重視するとともに、数多くの専門性とその実践の場を提供するよう努めています。多種多様な専門分野で教育研究を追求している地域政策学部の教員から、さまざまな視点や考え方を学んでいただきたい。

 

(地域政策学部長 新井野 洋一・にいの よういち)

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